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露地ナスのIPM取組事例

1 IPMとは
 Integrated Pest Management の略で、日本語では「総合的病害虫管理」と言う。

 耕種的防除、物理的防除、生物的防除、化学的防除を適切に組み合わせることにより、病害虫の発生を経済的被害を生じるレベル以下に減少させ、それを維持するシステムである。

2 露地ナスのIPM取組事例(埼玉県本庄市) 
(1)耕種的防除
 ア 3年以上の輪作による土壌病害(青枯(あおがれ)病、半身萎凋(いちょう)病)の発生防止
 
 イ 半身萎凋(いちょう)病及び半枯(はんがれ)抵抗性台木「耐病VF」の使用

(2)物理的防除

 ア マルチによる雑草及び褐色腐敗病(土はね伝染)の発生抑制
青枯病 半身萎凋病 マルチ

(3)生物的防除

 ア ハスモンヨトウ雄成虫誘殺用フェロモントラップによる密度抑制
   1haに1カ所のトラップ設置により地区外からの成虫の飛来を抑制

 イ オオタバコガ発生予察フェロモントラップによる適期防除推進

ハスモンヨトウのトラップ オオタバコガのトラップ ソルゴー

 ウ ナスほ場周囲へのソルゴー植栽による土着天敵の温存
 ソルゴーには、ナスには寄生しないヒエノアブラムシが多数発生し、これを捕食するクサカゲロウ類やテントウムシ類等の天敵類が増殖する。

 その後、隣接するナスに天敵類が移動することにより、ナスに寄生するアザミウマ類、ハダニ類、コナジラミ類、ハモグリバエ類、アブラムシ類の発生が抑制される。

ヒエノアブラムシ クサカゲロウ類 テントウムシ類

(4)化学的防除    
 天敵への影響の少ない選択性殺虫剤の使用による病害虫防除事例を提示し、これに基づく防除を推進した。

 農薬の散布間隔は20日であり、7月以降は毎回、天敵が働かないチャノホコリダニに防除効果のある農薬を選択した。
チャノホコリダニ被害

(5)留意事項

 ア 合成ピレスロイド剤、有機リン剤、カーバメート剤のような「皆殺しタイプ」の殺虫剤は散布しない。

 イ 天敵を温存するため、ソルゴーには殺虫剤を散布しない。

 ウ 農薬がムラなくかかるよう整枝・葉かき作業を励行する。

(6)成果

 10a当たり平均7.3tのナスの出荷量を確保でき、品質も良好であった。

 


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