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細菌による病害

1 細菌とは

 細菌(バクテリア)は、体の基本構造は単純な生物で、外側は堅い細胞膜で囲まれ、内側には柔らかい細胞膜がある。

 角膜はなく、遺伝子がある染色体は、裸で細胞内にたたみ込まれている。普通の生物の染色体は父方と母方の両方に由来する2本のDNAが絡み合った糸であるが、細菌では1本のDNAだけであるため、変異しやすい。

 増殖方法は、細胞の中でDNAを2倍にして大きくなってから、二つに分裂する方法を基本としている。
 
 増殖速度は非常に速い。(2倍に増える時間は、大腸菌で17分、ブドウ状球菌で26分)

 細菌の大きさは、直径0.5マイクロメートル(1マイクロメートルは100万分の1メートル)の球状のものから長さ10マイクロメートルの棒状のものまで、様々である。

 普通の細菌は、50℃の湯に10分浸ければ死滅し、乾燥状態でも生きられない。

2 青枯(あおがれ)病による被害
(1)被害等
 ナス科作物に発生する難防除病害であり、梅雨明け頃から夏に発生する。野菜の根から侵入した細菌が、毒素を出して水分の通る組織を壊すため、急激に萎れて枯れる。

 この細菌は、土中の被害根内で、根が完全に分解されるまでの約3年間生存している。田畑転換しても同様に3年間は感染の可能性がある。

 クロルピクリン剤による土壌消毒では、耕耘が行われた20cm程度については細菌が死滅するが、その下の地表面から20〜80cmに残った根のかけらでは細菌が生存しているため、新しく植えた野菜の根が地表面20cm以下まで伸長する時期(8月頃)以降に感染が始まることが多い。

 細菌は大きさ0.8×2マイクロメートル程度の短桿状で、収穫時にハサミについた汁液でも伝染する。

 被害茎を水に入れると、細菌が流出して白濁する。

ナス青枯病 トマト青枯病 細菌が流出して白濁

(2)防除対策
 ア 連作を避ける

 イ 抵抗性のある台木を使用する。(ナスではカレヘンやトルバム・ビガー)

 ウ 連作する場合は、土壌消毒を必ず行う。

 エ 発病株は発見次第、地際から上部を切り取る。(根を抜き取ると、隣接株の根を傷つけて感染しやすくなるため、収穫終了時に処分する。)

 オ ハサミは、毎日70%アルコールに数秒間どぶ浸けして消毒し、畝ごとにハサミを取り替えるようにして、感染拡大を防ぐ。 

3 その他の細菌病による被害
 
(1)症状
農作物名 病名 被害
アブラナ科野菜、ネギ類、ニンジン、レタス等 軟腐(なんぷ) 根や葉が腐り、強い悪臭を生じる。(細菌は共通。)
ブロッコリー、カリフラワー、キャベツ、ダイコン 黒腐(くろぐされ) 葉に褐色くさび型の病斑を生じる。発生は多いが、進展は遅く、実害は少ない。(細菌は共通)
キュウリ 斑点細菌病 葉に水浸状の角形病斑を生じる。多発生時には果実にも病斑を生じる。
イネ もみ(がれ)細菌病 出穂・開花期以降に、もみが急に枯死し、重病穂は直立したままとなる。穂軸や枝梗は緑色を保っていることが特徴である。種子伝染する。

ネギ軟腐病 ダイコン軟腐病 ハクサイ軟腐病
カリフラワー黒腐病 キュウリ斑点細菌病 イネもみ枯細菌病

(2)防除対策
 ア 発病地では、連作を避ける

 イ 薬剤防除を行う。登録薬剤は、銅剤が中心であり、糸状菌対象の薬剤と異なる場合が多い。
 
 ウ 軟腐病は、土壌水分が多いと被害が大きくなるので、ほ場の排水性を良くする。
 
 エ イネもみ(がれ)細菌病は、種子消毒が必要である。


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