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ウイルスによる病害 |
1 ウイルスとは ウイルスは、自分を複製するための遺伝情報である核酸と、それを覆うタンパク質からなる。 単独では生長して自分と同じ子孫を作ることはなく、物質代謝(生命維持のための光合成や呼吸等の化学反応)もしないので、生命体とは言えず、単なる物質の結晶である。 しかし、ウイルスは植物や動物の細胞内に侵入すると、自分の持ち込んだ遺伝情報を宿主細胞の酵素に読みとらせて、多量のウイルスを複製させて、宿主細胞を破壊してしまう。 ウイルスは、ナノメートル(10億分の1メートル)単位の微小な大きさであり、電子顕微鏡でなければ見ることができない。 形は球状、棒状、ひも状などである。 2 ウイルスの伝染方法 吸汁性昆虫(アブラムシ類、アザミウマ類、コナジラミ類、ウンカ・ヨコバイ類)が、口吻を通じて感染させることがも多い。
土壌中の糸状菌(かび)が、根に寄生する際に感染する土壌伝染性ウイルス(ムギの縞萎縮病ウイルス)もある。 接ぎ木による感染や、整枝剪定や収穫作業中にハサミについたウイルス感染株の汁液で他の健全株に感染することもある。 3 ウイルスによる被害 葉が濃淡のモザイクや奇形になる。株全体が萎縮する。葉にえそ(組織が死んで褐色になる)斑点を生じるなどの被害。 従来のウイルス病は、致命的な被害を生じるもの(黄色表示)が多かったが、近年発生したウイルス病では、果実被害がほとんどないものも見られる。
4 ハウス栽培における防除対策 (1)ハウス栽培では、防虫ネットを設置し、媒介昆虫の侵入を防ぐ。出入り口や側窓だけでなく、天窓にも設置が必要である。 防虫ネットの目合いは、アザミウマ類・コナジラミ類の侵入を防ぐためには0.4mm以下が必要であるが、その場合、湿度が高まり、病害が発生しやすくなるので、循環扇の設置を合わせて行うことが望ましい。
(2)近紫外線カットフィルムにより媒介昆虫の侵入を防ぐ。 紫外線カットフィルムは、昆虫が見ることのできる近紫外線(波長が300〜400ナノメートル)を除去することにより、昆虫の目には施設内部が暗く見えるため、侵入阻止及び活動抑制効果がある。 ただし、ナスでは着色障害を起こすため使用できず、ミツバチ等の花粉媒介昆虫も利用できなくなる。
(5)有色粘着トラップにより、ハウス内の虫を捕殺するとともに発生を監視する。 コナジラミ類やアブラムシ類は黄色に、アザミウマ類は青色に集まる性質があるため、黄色や青色の粘着トラップをつるす。
(6)感染株の抜き取り処分を行う。 致命的な被害を生じるウイルス病は、感染株を発見次第、抜き取り処分を行う。 果実被害のほとんどないウイルス病は、生育初期を中心に抜き取り処分を行う。 (7)収穫終了後は、農作物を地際から切断又は抜根した上で、施設を密閉して蒸し込み処理(40℃以上で10日以上)を行い、虫を確実に死滅させる。 5 露地栽培における防除対策 (1)抵抗性品種の活用 イネ縞葉枯病は、昭和50年代は埼玉県における最重要病害であり、薬剤防除では被害を防げなかったが、抵抗性品種「むさしこがね」の作付増加に伴い発生が急激に減少した。 現在の埼玉県の主要品種の「彩のかがやき」も抵抗性品種である。 (2)育苗時の防虫ネット被覆 ネギでは、育苗時にトンネルの防虫ネット被覆や寒冷柘被覆を行い、有翅アブラムシ類の飛来を防ぐ。 |
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